天なびコラム

第6194話

2017年10月12日

あれもこれもフィードバック

インターネットが普及して、「フィードバック」という言葉が広く使われるようになりました。
大手検索サイトにも「サービス向上にご協力ください。(中略)フィードバックを送信できます。」などと書かれてありますし、ネットオークションで取り引きをして、最後に相手を評価する際のURLにも「feedback」が含まれています。
ネット検索で意味を調べると、「感想や評価を提供側や著者や部下に伝えること」ともあります。
天なびコラムの感想を送るのも「フィードバック」でしょうか。

かなり曖昧に使われている「フィードバック」ですが、本来の定義は、ひと言で表現すると「変化が(自身に還って)さらなる変化に繋がって繰り返されること」だと思います。
気候変動においては、相互作用とフィードバックが重要な役割を果たしますが、分かり易い例としては以下のものがあります。

・雪氷アルベドフィードバック …
アルベド(albedo、実際の発音はアルビィードゥに近い)とはラテン語で「whiteness(白度)」を意味します。
気温が上がると地球表面を覆う雪氷が減って、露出した地面や海面が太陽光を吸収して温まるので、益々気温が上がります。

・水蒸気フィードバック …
気温が上がると海洋の蒸発が増えて大気中の水蒸気量も増えますが、水蒸気は温室効果ガスなので、益々気温が上がります。

・炭素循環フィードバック …
気温が上がると海洋や土壌の二酸化炭素の吸収量や蓄積量が減るので、大気中の二酸化炭素が増えて、益々気温が上がります。

(ある平衡状態から)何かが引き金となってフィードバックが起きると、時間とともに指数関数的に変化するのですが、際限なく変化するわけではありません。
フィードバックにも正負があって、どこかで正負が入れ替わって、また別の平衡状態に落ち着くことが多いです。
過去に起きた気候変動では、氷期--間氷期の急激な遷移がフィードバックで説明されています。

さて、気候変動以外にも世の中には様々なフィードバックが存在します。

例えば「ハウリング」。これからの季節、運動会や文化祭などで、うっかりマイクをスピーカーに向けると、特定の周波数だけが拾われて増幅されて、耳障りな音が響きます。
The Beatlesの楽曲「I feel fine」のイントロ部分、「ブン………ウニョーー」という音もギターとアンプ間のハウリングですが、「フィードバック奏法」と名付けられていますね。

自動車のブレーキ・アクセル踏み間違え事故にもフィードバックが潜んでいます。
ブレーキを踏んだつもりでアクセルを踏んでしまうと、焦ってブレーキをかけようと益々アクセルを踏み込むので急加速してしまうのです。
最近では、急発進抑制装置や障害物感知センサーの付いた自動車も開発され普及しているようです。

ノーベル賞やアカデミー賞やオリンピックのメダルなど、著名な賞の受賞プロセスにも、フィードバックが介在しています。
最初は小さな賞でも、徐々に名声や賞金やスポンサーがついて、その後の活動に有利に働くと、さらに大きな賞に繋がったりするのです。
「リッチな者は与えられて益々リッチに、貧乏人は与えられず益々(相対的に)貧乏になる」わけですが、聖書の一節に倣って「マタイ効果」とも呼ばれています。うーむ、格差社会ですなあ。

「やられたらやり返す」、個人の喧嘩や集団の抗争にもフィードバックがみられます。「倍返し」は勘弁して欲しいですね。

執筆者:風来坊