天なびコラム

第6592話

2018年11月14日

ひっつき虫

近くにある研究所の一般公開に参加してきました。普段は部外者は立入禁止で、鉄筋に閉ざされた中の様子を覗くことすらできないのですが、年に一度のこの日だけは、職員総出で不気味なぐらい満面の笑顔で、来所者を迎えてくれるのです。
さながら文化祭のようで、入口で配られるスタンプラリーの順路を辿っていくと、クイズ入りのポスター展示や測定器の体験コーナーがあったりして、なかなか楽しく研究内容を垣間見ることができます。(しかも無料で!!)

スタンプラリーのゴール地点で、ふと周りの参加者の足元を見ると、何やら緑のツブツブが付いています。自分の足元にも目をやると、ジーンズの裾はもちろん、シューズの靴紐にまで、緑のツブツブがくっついていました。ペリッと剥がして間近に観察してみると、小さな三角の枝豆のような種子(果実)に細かい産毛が生えています。
いわゆる「ひっつき虫」で、そのバラマキ源となる雑草が見学コースの途中に生えていたのでした。

帰宅して詳細を調べてみると「アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)」という北米原産のマメ科の多年草で、日本では1940年頃に大阪で見つかり、現在では本州から沖縄に至るまで勢力を拡大したようです。花はまあまあ華凛なのですが、知らないうちに衣服に種子が「ひっつく」のがとにかく厄介です。さらに検索してみると、ペットボトルやウロコ取りを使った上手い取り除き方が紹介されていました。

「ひっつき虫」というと、1cm〜2cm大の楕円形に棘が生えたような種子の「(オオ)オナモミ」もメジャーですが、アレチヌスビトハギほどには見かけなくなったような気がします。いずれの「ひっつき虫」も、昔、学校帰りに見つけては、すれ違いざまの他人の背中にテヤッと投げつけて遊んだものでした。(良い子は真似しないでね)

財布などによく使われる「面ファスナー」(いわゆる「ベルクロ(Velcro)」「マジックテープ」)も、こういった「ひっつき虫」の植物にヒントを得て考案されたようです。
それにしても植物なのに何で「虫」やねん…と今更ながらツッコミを入れて筆を置きたいと思います。

執筆者:風来坊