天なびコラム

第6713話

2019年03月15日

さくら文化論

桜の開花が待ち遠しいのは日本人だけではないようです。アメリカでは、ワシントンDCの桜の名所であるタイダルベイスン(池のような入り江)のソメイヨシノの生長のようすを国立公園局が発表しています。今年は3月5日に緑色の芽が確認されました。この後、ピンク色の花びらが現れた日、満開になった日など、各生長段階に達した日付が国立公園局のホームページで発表されていくようです。

興味深いのは、日本の「開花」にあたる日付が無いことです。おそらく「標本木」が無いのでしょう。ソメイヨシノは一斉に咲くとはいえ、全ての蕾が同じ日に開き始めるわけではありません。そこで日本では、気象庁が「標本木」という代表の1本を決めて、その木の蕾が5〜6輪開けば「開花」ということにしています。

タイダルベイスンの桜の場合は、代表の1本の5〜6輪ではなく、全体の7割以上の蕾が開いた日付が記録されています。これはほぼ、日本で言うところの「満開」です。お上が決めた代表ではなく、全体の多数意見(?)を重視するあたり、なんとも民主的といいますか、さすがは自由と平等を重んじる国、ということなのかもしれません。

天なびでは桜の開花予想日を発表して、開花前線を図にして掲載していますが、こうして「開花」で盛り上がること自体が、外国の方からすると独特で興味深いのかもしれませんね。桜への接し方を通して、文化の違いに思いをめぐらせてみるのも楽しいものです。


執筆者:ヒョウタン