天なびコラム

第6901話

2019年09月19日

雷獣の爪痕

知人から「自宅のすぐ近くの木に雷が落ちた!」というメールが届きました。近くに落ちたと感じることはあっても、はっきりここだと分かるのは珍しいように思います。写真も添付されていましたが実物を確かめたくなり、さっそく見に行ってみました。

雷が落ちたのは10メートル以上はあろうかという杉の木で、幹が上部から数メートルにわたって裂け、枝の重みでだらりと垂れ下がっていました。漫画ではよく黒焦げになっていたりしますが、焦げた形跡は無く、周囲には小枝や木片が散乱し、根元から外側に向かって地面が深くえぐられていました。

調べてみるとこれらは全て放電の形跡のようですが、「雷獣の爪痕」という表現があることを知りました。昔の人は、雷獣という妖怪が雷と一緒に降りてきて、樹木を裂いたり、人や家畜に危害を及ぼしたりしていると考えたようです。そう言われてみると確かに、鋭い爪を持つ化け物が暴れ回った末に逃げ去った跡のようにも見えました。

杉の大木を無残に引き裂いてしまうあたり、「雷獣」は相当な怪力の持ち主のようです。これまでは頭上で雷が鳴っていても「自分に落ちる可能性は低いだろう」と考えがちでしたが、その破壊力を目の当たりにすると、余計なリスクは犯さないでおこうと思うようになりました。みなさまもどうぞお気をつけください。


執筆者:ヒョウタン