天なびコラム

第6926話

2019年10月14日

テュポーン

台風19号は猛威をふるったあと、足早に日本から離れていきました。この台風は「ハギビス」と名付けられていましたが、その意味は「すばやい」。名の通りの動きをしたともいえます。
ところで台風の中でも「強い・非常に強い・猛烈な」といった強さの形容詞がつくものは、国際的に「Typhoon(タイフーン)」と表記されます。語感からわかるように台風の語源になっています。それでは「タイフーン」の語源は何か。
諸説ありますが、その中でギリシャ神話に出てくる「Typhon(テュポーン)」という怪物が由来とされるものがあります。神話には地獄の番犬ケルベロス、獅子の頭を持つキマイラ、9つの首を持つ大蛇ヒュドラなど有名な怪物が登場しますが、テュポーンは彼らの親で、最大最強の怪物として描かれています。
テュポーンは神々の王であるゼウスに勝つほどの力がありましたが、現在はイタリアのエトナ山に封じられているとされています。エトナ山は世界でも有数の活火山でたびたび噴火していますが、これもテュポーンが暴れているからだと言われることも。それだけ力をもった怪物です。
タイフーン級の台風が木々や電柱をなぎ倒し、屋根や大きな看板を吹き飛ばす様子をみると、まさに怪物が暴れているようです。ちっぽけな人間が立ち向かうことはできません。ただ知恵を絞って逃げることはできます。幸い、台風の勢力や進路に関しては5日前にはずいぶんとわかるようになりました。この情報をいかに利用して行動に移すかがポイントになるでしょう。
今年はこれで勘弁願いたいですが、毎年台風はやってきます。タイフーンが来ると予想されるときは、最強の怪物「テュポーン」が来襲するとイメージして身を守りましょう。

執筆者:西