天なびコラム

第7628話

2021年09月15日

富士六湖の定説が

1年前、このコラムで富士五湖ならぬ富士六湖の存在についてご紹介しました。
赤池と呼ばれるもので、昨年の出現が実に9年ぶりとなった珍しい現象です。
今年の夏もお盆の頃の大雨によって出現しており、2年連続の出現は38年ぶりだそうです。

その赤池について先日大きなニュースがありました。
赤池の出現には、富士五湖の1つである精進湖が増水後に地下水として湧き出る説があり、昨年のコラムでもこの説をご紹介しました。
しかし、今回のニュースはそれを否定するものでした。

山梨県の富士山科学研究所などが実施した研究によると、昨年出現した時の赤池の水と同時期の精進湖の水を採取し、細かい水質の比較をしたそうです。
すると、イオンなど水に含まれる物質の量が大きく異なっており、赤池と精進湖が地下水を通して繋がっているとは考えにくいとなりました。
また、水分子の微妙な質量の違いを表すのに使われる安定同位体比が、赤池の場合は降雨前後で大きく変化したことも分かりました。
これにより、赤池は直近の降雨によってもたらされたものであり、雨水が地下深くまでいかずに表層を通って流れ込むことで形成される可能性が高いと結論付けられました。

大きな発見ではありますが、「雨水が溜まったもの」よりは「精進湖の水が地下から湧いたもの」の方が神秘的ではあります。
実際、地元の住人の中には信じたくないと思う人もいらっしゃるようです。

今回の研究結果は、40年で10回にも満たない出現の内の1回を調べたに過ぎず、また昨年の赤池が小規模だったこともあり、今後も研究は継続するとのことです。
今年の出現も研究に生かされると思われます。
富士山好きの私としては、新しい研究結果を待つことにします。


執筆者:そふぃー