天なびコラム

第5539話

2015年12月27日

あこがれの凧あげ

♪「も〜う、い〜くつね〜る〜と〜」で始まる童謡、「お正月」。
歌詞にお正月の遊びがいくつか登場しますが、その先頭を飾るのが「凧あげ」です。
お正月の遊びの代表格、ということなのでしょうね。
でもこの凧あげ、私は大人になるまで経験したことがありませんでした。

というのも、私の生まれ育った雪国では、お正月に凧を揚げるなど至難の業だからです。
まず基本的に雪が降っています。風が吹けば吹雪です。
そのうえ凧を揚げられるような広場は雪に埋もれているので、除雪から始めなければなりません。
スキー、雪合戦、かまくら作り・・・と、雪を使った遊びには事欠きませんでしたが、そこはかとなく文化の香り漂う「凧あげ」に、幼い頃は強く憧れたものでした。

そんなあこがれの凧あげに、昨年ついに挑戦することができました。
最初はさっぱり揚がりませんでしたが、徐々にコツが分かっていきました。
特に興味深かったのは、突風を受けた時の対処法です。
急に強く糸を引かれるので、最初は負けじと糸を引き返してしまったのですが、すると凧はバランスを失って急降下し、無残に地面に叩きつけられます。
逆に、一気に糸を緩めて凧を風にゆだねると、凧は遠くまで飛ばされて高度も下がりますが、持ち直して再び風を捕らえるようになります。
それを待って糸を引き始めると、糸が長くなった分、突風を受ける前より高く揚げることができるのです。
少し人生に似ているような気がします。

おそらく新しい年も、時には突風に吹き飛ばされたり、あるいは乱気流に翻弄されるような日もあることでしょう。
そんな時でも、焦らず、抗わず、諦めず、風を受け止め続けることができますように。
願いを込めて、お正月にはまた凧を揚げようと思います。


執筆者:瓢箪