天なびコラム

第6154話

2017年09月02日

帰宅指示のタイミング

今から10年以上前、気象とは無縁の会社に勤めていた時の出来事です。その日は夕方から夜のはじめ頃に台風の直撃が予想されていました。電車が止まるだけでなく、外に出ること自体が危険になる可能性もあります。今夜は風雨が収まるまで会社で籠城だ、そう覚悟を決めていました。

ところが午後3時過ぎだったでしょうか、突然の社内放送に私は耳を疑います。「台風が接近しているため、全員、業務を終了して帰宅してください。」これからまさに台風が最接近する時間帯に全社員を外に放り出すなど、逆に危険な判断のように思えました。天気予報で繰り返し台風情報が伝えられていたはずなのですが、この判断に関わった方には、肝心の危険な時間帯が伝わっていなかったのでしょうか。

しかし後になって、この体験を気象庁OBの方に話したところ、また違った見解を示してくださいました。午後3時頃、というのは、様々な組織で帰宅指示が出やすいタイミングなのだそうです。お昼では業務に支障が出る、かといって何もしなければ無策とのそしりを受ける。そこで「最も批判を浴びにくい」タイミングとして、午後3時頃が選ばれることがあるらしいのです。

それにより危険が増しては本末転倒ですが、専門家でもない方がリスクを正確に把握して決断を下すのはそれだけ難しい、ということでもあるのでしょう。これからまた本格的な台風シーズンを迎えます。様々な場面で、様々な方が判断を迫られた時に、お役に立てていただけるような情報をご提供していきたいと思います。


執筆者:ヒョウタン