天なびコラム

第6629話

2018年12月21日

予報師

12月に入ってから、年末業務に忙殺されております。12月のことを「師走(しわす)」とも表現しますが、お経をあげるために「師僧(師匠となる僧侶)」があちこちに「馳せ走る」月であることから、シハセ、シハス、シワスと呼ばれるようになったというのが定説のようです。「師」という漢字はサンスクリット語由来で、「重んずべき目上の人」「導く者」「技術を修めた者」などの意味があるようです。例としては「老師」「教師」「牧師」「医師」など。(医療分野も何故か好んで「師」が使われるようです。「看護師」「薬剤師」「鍼灸師」など。)

さて、キショウヨホウシを漢字で書くと正しくは「気象予報士」ですが、これを「気象予報師」と書くと途端に如何わしく見えてくるから不思議です。どうやら「師」が付く人々は、決して尊敬を集めるような者ばかりではなく、言葉巧みに言いくるめて他人を騙すような輩も含まれているようです。例えば「奇術師」「詐欺師」「ペテン師」「山師」「地面師」など。
奇術師はいいとして、その他はヒドイですねえーー。

一方、「士」が付く職業は、「弁護士」「税理士」「建築士」といった、わりと「お固い」ものが多くみられます。「士」という漢字は古代中国では「統治階層」を指していましたが、やがて科挙試験で官吏登用されるようになると、「つわもの」「仕える人」「優れた者」「技術を身に付けた者」といった意味で使われるようになったようです。

優れた技術の「予報士」ではあっても他人を惑わす「予報師」にはならないよう心掛けたいところです。

執筆者:風来坊