天なびコラム

第7256話

2020年09月08日

台風とお米

台風襲来の度に、秋の空気を運んでいるように思われる。近くのお寺からは、ツクツクボウシの鳴き声が届き、今年の夏も終わりが近づいていることをしみじみと感じた。

郊外へ足を運ぶと金色の田んぼが目に入る。早いところでは、稲刈りを行っているところがある。そのような光景を眺めながら、刈り取られた稲が食卓で食べられるようになるまでにはまだまだ長い工程が残っているのだと考えていた。コンバインにより脱穀された稲は籾(モミ)の部分のみ袋に集められて乾燥機にかける。乾燥が終わると、籾摺り機で籾を取り除き玄米を作る。その後、玄米を精米機にかけて白米になり、ようやくお米を炊くことができる。稲刈りが行われている田んぼを遠くより見ながらふとそのようなことを考えると、苗から白米になるまで長い月日がかかる分、普段何気なく食べている一つ一つの米粒も大切にしなければならないと改めて感じた。

これから収穫を迎える地域では台風が襲来すると、お米の収穫に大打撃を与える。私の実家でも収穫前に台風が接近するときは、早めに稲刈りを行い、被害を最小限にするなど天気予報を注視していたように思われる。しかし、8月上旬頃に台風が襲来すると、お米の花の開花のタイミングが悪ければ受粉が正しく行われず、実の少ない年になってしまうのだ。


執筆者:阿波狸