天なびコラム

第7372話

2021年01月02日

たこたこあがれ

あけましておめでとうございます。
本年もお天気ナビゲータをよろしくお願いいたします。

お正月の風物詩でお天気に深く関わるものというと、凧揚げが思い当たります。
凧揚げについて、「空高く揚がっていく様が縁起のいいものに見えるのでお正月の風物詩になった」というのは納得できるのですが、だからと言ってお正月“だけ”のものにしてしまうのは私はちょっと納得できません。
気象に興味のある者としては、もっと根源的な「空のことを知りたい」という欲望が形になったものが凧ではないかと思うからです。

高層気象観測は、地上と同じ観測を山で行ったのが始まりとされていますが、観測機器を空に飛ばしたのは、1749年にアレキサンダー・ウィルソンが凧で上空の気温を観測したのが世界初です。
それ以降、第一次世界大戦前がピークでしたが、ゾンデに取って代わられるまで、凧を使っての高層気象観測は世界中で行われていました。
今では、凧で高層気象観測をするのはごく少数の愛好家だけですが、データだけでなく、糸を介して空の様子が直接手に伝わるというのが一番の醍醐味だそうです。
私が住んでいる大阪でも、淀川の河川敷でスポーツカイトを飛ばしている人を時々見かけますが、上空の風の様子が凧の揺れに実体化しているようで、見ているだけでも楽しいです。

また、凧を使った気象観測で有名なものというと、1752年のベンジャミン・フランクリンによる、雷が電気であることの証明でしょう。
雷雲の中に凧を飛ばし、凧糸で雷を誘導して蓄電瓶に電気を貯めることに成功したものです。
これも、空のことを知りたいという欲望から凧を使ったものだと思います。
ただし、フランクリンが成功したのはまぐれのようなもので、同様の実験で感電死した人が何人もいる危険な実験なので、雷の危険性があるときに凧揚げはしないようにしましょう。

このお正月を機に、純粋に空のことを知るための趣味として凧揚げをしてみてはいかがでしょうか。凧揚げをするときは雷だけでなく、周囲の電線や木、建物に注意して、いい風が吹いている時を狙って揚げましょう。


執筆者:ありんこ