天なびコラム

第7376話

2021年01月06日

トンネルを抜けると

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」川端康成の「雪国」での有名な一節です。
この舞台となったのは群馬県と新潟県の県境です。
トンネルに入る前の晴れ間と、トンネルを抜けた後の銀世界とのコントラストを表現したものです。
私は関東に住んでいたこともあり何度か同じような経験をしました。
冬、特に1,2月の西高東低の気圧配置の時、群馬県ではフェーン現象によって乾燥した強い北風が吹きます。そのため雲一つない青空が広がります。
一方でトンネルの先、新潟県では日本海の水蒸気を大量に含んだ北風が流入するため、いわゆる「ドカ雪」が降ります。そのため群馬県側とは対照的に一面真っ白な銀世界が広がります。
私もかつて高速道路で群馬県から新潟県へ抜けるとき、「出口ではどのような景色が広がっているのだろう」という高揚感が楽しみでした。
最近では雪国へは飛行機で行くようになり、“あの時”感じた高揚感を忘れつつあります。
いつか小説のように自由気ままに全国を旅したいと思う今日この頃です。

執筆者:くじらのお