天なびコラム
第8720話
2024年09月11日
ライフサイクル
ライフサイクルとは、生物の一生の過程を、誕生から成長、そして衰退へと描く周期のことです。生物と書きましたが、ビジネス(製品やサービス)など他の世界でもライフサイクルは存在していて、それは気象の世界にも存在します。
例えば、日本のような中緯度帯で発生する温帯低気圧。この低気圧にも誕生から成長、衰退のライフサイクルが存在します。その誕生から消滅までの寿命は数日です。
台風(強い熱帯低気圧)になると、平均的な寿命は約5日、過去最長、これまでで一番のご長寿さんの台風は昭和61年(1986年)の台風第14号で約19日間とされています。
夏の間、天気の急変で私達をやきもきさせた積乱雲。この積乱雲1つ1つの寿命は20〜60分とされています。とても短命です。この短い時間の中にもライフサイクルが存在しています。発達期では、雲の中全体で強い上昇流が発生し、雲粒が成長して、水滴や氷粒が作られている段階。
最盛期になると雲の中で上昇流と下降流が共存します。たくさん生成された大きな水滴や氷粒は地面へ落下して雨や雹となり、一部の氷粒は雲の中で上昇下降を繰り返して電荷を帯びるようになり、やがて雷となります。
衰退期になると、雲の中全体で下降流が吹き始め、やがて水滴や氷粒はなくなり、積乱雲はその一生を終えます。
わずか数十分の寿命ではありますが、衰退期の積乱雲が起こす下降流は周囲に広がって、また別の積乱雲を生み出すきっかけとなることもあります。夏の夕立が何時間もかけて強雨や雷を引き起こすのは、個々の積乱雲が衰退の過程で新たな積乱雲を生み出す手助けをしているからなんです。
人生100年時代と言われる私達ですが、誕生、成長、衰退(したくないですが…)のライフサイクルはどうなっているのでしょう。おそらくそのサイクルとステージの変化は、個々それぞれの環境の違いと経験で、大きく変わっているはず。
私の場合、ライフサイクルのステージが大きく変わったと感じたのは、娘が生まれた7年前の10月です。誕生したその日から日々刻々と成長する娘に何が伝えられるか、何を残せるか、という思いが強くなりました。
一方で、無邪気に暴れたり、すぐに体調を崩したり、子供の成長ステージを支えるのは日々大変なことですが、同時に自分自身も同じ頃、大暴れしては体調を崩す私を両親が精一杯私を支えてくれたんだということを、親になって初めて実感することができました。
そんな両親への感謝の思いを背負い、娘を育てる使命を背負い、さらには家族や会社の期待も背負い、ライフサイクルのステージは明らかに変わったとはいえ、まだまだ私自身が成長を終えるわけにはいきません。できればこの寿命が尽きるまで、成長期を続けていきたいものです。
執筆者:そら