天なびコラム
第3857話
2011年05月20日
ムーンストラック
ムーンストラックには「感傷で心が乱れる」「錯乱する」といった意味があります。直訳すると「moon(月)にstruck(打たれる)」という意味になりますが、月光が狂気をもたらすといったヨーロッパの伝承から、このようなあまりよろしくない意味を持つようになったようです。
月が人を惑わすかはさておき、私達の住む地球や私達自身に、月が少なからず影響を与えていることは確かです。その1つが海の潮の満ち引き。潮の満ち引きは地球や周囲の天体によって起こされる重力場が、場所によって異なることで引き起こされるのですが、その中でも月の引力が重力場に与える影響はとても大きいのです。
潮の満ち引きの大きさは月の形によって変わって、満月や新月の時には潮の満ち引きが最も大きくなります。この日の周辺を潮名で「大潮」と呼ぶのですが、海の仕事やレジャーをされる方はご存知ですよね。満月や新月の時は、太陽と月と地球が一直線に並んで引力が増大するために、海面の引っ張られる力も大きくなることが原因です。逆に上弦と下弦の月のときは、太陽と月の引力が相殺されて、潮の満ち引きが小さくなります。この頃が潮名でいう「小潮」になります。
海が月の引力の影響を受けるように、人の身体も何らかの影響を月から受けています。身体の60〜70%が水分で構成されているのですから、天体の重力場によって血液の流れが変化して、それが生理面や精神面に影響を与えることはあながち不思議ではありません。実際、カニの産卵が満月や新月の日に一斉に行われるように、他の多くの生物も月の満ち欠けに依存した行動をしています。
人の場合、月の満ち欠けと交通事故、犯罪の発生数などの因果関係を研究する試みもあり、ある程度の関連性を見出したケースもあるようですが、実際はどうなのでしょう。私自身にはあまり影響していない気がするのですが、時々説明のつかない感情の変化もあるような…。皆さんはいかがでしょうか。
ムーンストラックには「夢見心地の」という意味もあるそうです。お月見の頃のように大きな満月の月光は、確かに私達の心を度々魅了してくれますよね。どうせ月に打たれるのなら、いつも幸せな気持ちになりたいものです。
執筆者:そら