天なびコラム

第6248話

2017年12月05日

ラニーニャがはじまるよ

(コラム題名は槇原敬之さんの曲の影響を受けたかもしれません)

11月10日に気象庁が発表したエルニーニョ監視速報では、「ラニーニャ現象の発生に至らない可能性もある(40%)が、発生に至る可能性の方がより高い(60%)」とのことでしたが、最新の観測データによりますと、11月のエルニーニョ監視海域の海面水温は十分低温でしたので、ラニーニャ現象発生に向けてまた一つ歩を進めたようです。

冒頭から気候用語がバシバシ登場しましたが、簡単に説明しますと、東部赤道太平洋(エルニーニョ監視海域:南緯5度から北緯5度と西経150度から西経90度の海域)の海面水温が、「エルニーニョ」は通常よりも高温の状態で、「ラニーニャ」は低温の状態を指します。
前者が古くから伝わるペルーの漁師言葉(元々はクリスマス頃に現れて休漁期を告げる暖流El Nino=The child Jesus or The boyを指していたのが、転じて海の異常昇温)に因むのに対し、後者は「その逆で海の異常低温ならLa Nina(The girl)でええやん」ということで、比較的最近、そう呼ばれるようになりました(初出は1985年、George Philander博士による)。
じゃあ、El NinoでもLa Ninaでもない、どっちつかずはどうなのかというと、neutralまたはnormal stateと呼びます。なんでやねん(?)。

さてラニーニャですが、既に2017年8月半ばから当該海域で水温の低い状態が続いています。偏差は-0.5から-1℃程度で、それほど強くありませんが。
気象庁が「ラニーニャ現象発生」と発表しないのは、「5か月移動平均値が-0.5℃以下の状態で6か月以上持続する場合」と定義しているからです。11月が終わって、2017年7月から5か月間の偏差の平均がようやく-0.5℃以下になるところですので、このぶんだとラニーニャ現象発生が発表されるのは来年の春ぐらいになるかもしれません。ちょっと気の長い話ですね。

それでは、この冬の日本の天候はどうなるのでしょうか。
熱帯の気候変動が定在波列を通じて中高緯度の遠隔地まで影響を及ぼすことをテレコネクション(teleconnection)と呼びますが、ラニーニャのときの日本は寒冬となり、日本海側で降雪量が多くなる傾向にあります。これは西太平洋(Western Pacific,WP)パターンと呼ばれるテレコネクションの型が形成されて、日本付近では西高東低型の気圧配置が強まり、また北極振動による寒気の南下の影響を受け易くなるからです。

急に冷え込むと体調を崩しそうなので、少しずつ寒さに身体を慣らしたいところです。これからも油断禁物です。

執筆者:風来坊