天なびコラム

第6698話

2019年02月28日

GPS気象学

気象学の分野の中にGPS気象学がある。GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)という単語は一般に知られており、我々の現代で欠かせない大きな役割を果たしている。GPS衛星は地表高度約20000kmに配置され地上では常に複数の衛星の電波を捉えられるよう配置されている。複数の衛星からの電波を同時に3つ以上受信することで受信点の3次元位置を、4つ以上受信することで正確な時刻を算出できるが、これらの値には誤差が含まれている。この誤差の要因は複数あり、地球大気の電離層、水蒸気、受信アンテナ付近の障害物や電波干渉、衛星軌道のズレ等がある。この中で特に着目するのが水蒸気の影響である。

GPS衛星から受信機までの電波の到達時間が水蒸気によって遅れることを電波伝搬遅延と呼ぶ。この電波伝搬遅延は水蒸気量によって変化することから、大気中の水蒸気(可降水量分布)を求めようとする研究がGPS気象学と呼ばれている。GPSを測定している地点は日本には1200点以上ある。これらの測定地点を用い、大気中の可降水量分布を求めることで、突風や豪雨などの突発的な気象現象の予測に繋がると考えられている。

我々が持っているスマートフォンのGPSも、GPS気象学の測定機器として活用できるかもしれない。




執筆者:阿波狸