天なびコラム

第6903話

2019年09月21日

ノンスーパーセル竜巻

近年、国内でも多くの竜巻発生報告が挙げられている(気象庁竜巻等の突風データベース:https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/tornado/)。一般的に日本で多く見られる積乱雲はノンスーパーセル型と呼ばれるものである。この積乱雲は、一般的に発生から消滅まで1時間程度の寿命しかない。従って、一般的な孤立積乱雲による豪雨は1時間程度で終息する。近年の豪雨災害をもたらすのは、この孤立積乱雲が次々と連なって形成された線状降水帯によるものが多い。

ノンスーパーセル型の竜巻は、他の降水システムで生じた冷気外出流により形成された局地前線付近で発生しやすい。この局地前線付近では、風向・風速が水平方向に対して著しく変化しており、この前線に沿って風の水平シアーが生じ鉛直軸を持つ渦が形成される。局地前線付近では気流の収束が起きやすく、上昇気流により対流性の雲が発生しやすい。対流性の雲が発達し強い上昇気流が生まれると、局地前線付近の渦が上空に引っ張られ、強められることで竜巻となる。局地前線上で発生する竜巻は同時に複数個の竜巻を形成することもあるが、対流雲の停滞性が不安定のため竜巻の寿命は数分から十数分程度と短い。

このようなメカニズムで発生する竜巻を、米国で度々発生するスーパーセル竜巻と区別するためにノンスーパーセル竜巻と呼ぶ。




執筆者:阿波狸