天なびコラム

第7671話

2021年10月28日

台風の爪痕をみて

今月の後半から一気に季節が進みました。近畿地方ではすでに木枯らしが吹き、冬隣であることを感じさせられます。
ところで先日、奈良と三重の県境にある「大台ヶ原」で紅葉狩りをしてきました。雨のち曇りの天気でしたが、混雑を避けられたのは良かったです。
散策していると枯木立が目立つ場所が現れます。霧に包まれた状態でこの風景をみると何ともいえない寂寥感がこみ上げます。「なぜ、このような環境ができあがったのだろう」と不思議に思っていると、「昔はこのような森でした」と書かれている看板を見つけました。写真をみると今では想像もできないようなうっそうとした森です。
今のような寂しい様子になったのは伊勢湾台風でたくさんの樹木が倒れたことがきっかけとのこと。倒木を搬出したあとに林床が乾燥し、ササに覆われるようになりました。そのササを主食とするシカが住み着いて、樹木の皮をはがされたり、若い木の芽が食べられたりするようになり、以前とは環境が大きく変化してしまいました。
伊勢湾台風が襲来したのは60年以上も前のことですが、そのときの爪痕がここまで深く残っていることに驚きました。いま、以前の姿に戻そうと自然再生事業が行われていますが、それまでに伊勢湾級の台風が再び襲来したらどうなるんだろうと考え込んでしまいました。
でも、復活した森にはぜひ訪れてみたいです。そのために何かできることはないか。そんなことを考えさせられる一日になりました。

執筆者:西