天なびコラム

第2676話

2008年02月24日

緩やかな時の流れを願う

前回の私のコラムのネタバレをしますと、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデの作品「モモ」からの引用でした。ご存知の方がいてくれたことは嬉しい限りです。

この物語には、現代社会が抱える問題にリンクする描写が他にもたくさん出てきます。折角の作品とのご縁なので、もう一つだけ紹介させてくださいね。

作品に出てくる街の子供達。子供達の遊びには、自由な時間と遊び場所があれば十分でした。子供達はいつも思い思いに遊び方を発案していきます。時には落ちてる木の枝を剣に変えて、時には廃墟を未来の船に変えて、変わりゆく天気すら子供達の遊び道具になっていたのです。

ところが、時間泥棒に時間を奪われてしまった大人達は、子供達を束縛します。便利な社会になって玩具も種類が増えて生活が豊かになったのですが、子供達は主人公のモモに「昔の方が楽しかった」と告げます。ルールの決められた遊び、決められた遊び場所、遊び方の決まった玩具が、子供達から夢を見ることを奪ってしまったのです。

最近作品を読み直してみて、私も子供時代に朝から日暮れまで町中を冒険していたことを思い出しました。青空に浮かぶ綿雲や迫り来る夕立雲でさえ、冒険を彩る大切な遊び道具にして、それこそ時間を忘れて遊んでいました。

刻々と時を刻み続ける現代社会。そんな逃れられぬ追っ手の存在に気付いてしまった今だからこそ、時間を忘れるくらい夢中になれる楽しさや、大空を駆け巡るほどの無限の想像力を大切にしていきたいと思います。そうすれば、忙しなく刻み続ける時間に少しでも緩やかな流れを取り戻させてくれるかもしれない。

いや、そうであって欲しい。。。

執筆者:そら