天なびコラム

第2856話

2008年08月22日

空虚と虚空

お盆休みが終り、学校の夏休みも終りが見え、大人も子供も空虚な気分になりがちな時期になってしまいましたね。私も子供の頃は追われる宿題や、また始まる早起きの日々に、空虚な時間を過ごしていたことを思い出します。最近は仕事からの帰り道の方に空虚を感じることが多いですが。。。

空虚を辞書で調べると、「内部に何もないこと」「実質的な内容や価値がないこと」「むなしさ」と出てきますが、実際私達が感じている空虚は、もっと複雑で言葉には表しにくいようなモノのような気がします。空虚の文字をさかさまにすると虚空。虚空とは、何もない空間や大空のことを差します。どちらにしてもネガティブな印象を抱いてしまいますね。

ちなみに、力が抜けてボーっとしてしまうことを「うつろ」と呼びますが、漢字だと「空ろ」とも「虚ろ」とも書けます。この2つの文字を掛け合わすわけですから、嫌なイメージになってしまうのは仕方がありませんよね。

空虚と虚空の大きな違いはその存在場所。空虚が私達の内側にあるのに対して、虚空は私達の外にあります。空虚を見ることは出来ませんが、虚空は見上げることができます。

その見上げられる虚空。私達は普段、同じように見上げた空に、美しさや心地良さ、楽しさを感じています。それなのに、むなしいと感じさせているのは、私達の空虚な心が空を覆い尽くそうとしているからです。

そんな時は、海や山、高台の公園やビルの上にでも登って、うんと空を広げてみましょう。地平線まで続く空、広い空を悠々と流れる雲、その全てを感じていると、自分の存在の小ささを思い知らされます。そんな小さな存在の持つ空虚さが、この空を覆えるわけがない。そう感じた時、内なる空虚さは、逆に広く大きく暖かな空に、覆い尽くされて消えてしまうでしょう。

空虚な心は虚空を生み、遥かなる空は空虚な心すら覆う。人にとって空はいつでも母なる存在です。

執筆者:そら