天なびコラム

第5580話

2016年02月06日

佐保姫

暦の上では春を迎えましたが、今日は冬型の気圧配置になる模様。冴え返る一日になりそうです。
それでも移動性高気圧に覆われるような日は太陽が高くなったことを実感できます。散歩に出かけると気持ち良いですが、景色は薄いもやがかかってぼやけていることが多いです。そう、春は霞の季節。秋のようにハッキリ見える景色はもちろんキレイですが、ベールがかかったような仄か(ほのか)な風景こそ春に似合っていると感じます。
ところで、佐保姫という春の女神をご存知ですか。奈良の平城京の東に佐保山という地名があります。実際は山というより丘に近い場所ですが、その山に宿る女神の名前が「佐保姫」です。春の女神となった由来は「佐保山が平城京の東にあるため(東は春を表す方角と考えられていた)」や「桜の名所であったから」など諸説あります。
その姿の特徴は白く柔らかい衣をまとっていること。これは佐保山に春霞がかかる様子を表しています。秋の女神として竜田姫も有名ですが、こちらは紅葉を模した着物姿でよく描かれており、色合いはハッキリしています。擬人化するときにも、しっかり季節感がイメージされているのですね。
また佐保姫は和菓子の名前にもよく使われています。お店ごとに形や味は異なりますが、どれも霞のイメージがちゃんと表現されており、季節を感じさせてくれます。しばらく寒の戻りが続きますが、来週の半ばには春を思わせる天気になりそう。霞んだ空を眺めながら佐保姫をいただいて早春を味わいたいと思います。みなさんもいかがですか。

執筆者:西