天なびコラム

第5586話

2016年02月12日

クロカン

おそらく一般的ではないと思いますが、私の故郷ではクロスカントリースキーのことを「クロカン」と呼んでいます。そしてそのクロカンがとにかく盛んです。

小学校の3学期の体育はすべてクロカンでした。
3学期の始業式の日、子供たちはみんな、自分の身長よりも長いスキー板を担いで登校します。先生達は朝早くから、雪に埋まった校庭や周辺の畦道にスノーモビルを走らせてコースを作っています。そしていざ体育になると、「今日は1キロコース2周!」のような指示が出され、先生が作ったコースをみんなでせっせと走るのです。
そして週末はスキー大会。学校の大会だけでなく、町の大会、地区の大会・・・と大会が目白押しでした。

これほどまでにクロカンが盛んな理由を、当時は「田舎すぎてひと昔前まで生活にスキーが必要だったから」くらいに思っていました。それもあったのかもしれませんが、改めて考えると、私の故郷の地形と気象条件は、実にクロカンに適していたように思います。

・豪雪地帯でたっぷり3ヶ月以上は積雪がある
・山すぎない(川沿いの平地)
・風が強すぎない(日本海から遠い内陸部)
・寒すぎない(真冬でも平均気温は-1.5度程度)

これらの条件の一つでも欠ければ、十分な練習環境が得られなかったり、子供に雪原を走らせるのは危険だったりすることでしょう。郷土に適したスポーツを振興しているわけで、実に合理的です。そういえば、小さな町にもかかわらず、オリンピック選手も輩出したことがありました。

こうして考えると、私達はクロカンを通して、故郷の大自然を身体と記憶とに刻み付けていたのかもしれません。どちらかというと苦い思い出だったクロカンが、大切な記憶へと変わってきました。


執筆者:瓢箪