天なびコラム

第5595話

2016年02月21日

あびき

2月も下旬。まだ気象庁の季節区分では冬ですが、低気圧と高気圧が交互に通過する天気図から春隣りであることを実感します。
ところで、「あびき」という現象をご存知ですか。これは一般的な満潮・干潮とは異なる潮位変化のひとつであり、周期が数分から数十分の海面の昇降現象をいいます。あびきを漢字で書くと「網引き」。速い潮流のため魚網が流されることから名づけられました。主に長崎など九州の西部沿岸で発生します。
規模の大きいものだと30分ほどで3m近く潮位が変化しますので、みるみるうちに水面が盛り上がり、そして引いていきます。このあびきは船舶や養殖施設の流失や浸水被害を起こすことがあります。
発生原因は東シナ海の気象現象による気圧の急変で、南海上を低気圧が通過するときや前線が停滞するときによく見られます。また冬の終わりから春先に起こりやすくピークは3月。つまり今は「あびきシーズン」です。
被害を及ぼすような「あびき」が予想されると「副振動(あびき)に関する潮位情報」や高潮注意報・警報が各気象台から発表されます。これからの季節、九州西部沿岸にお住いの方はもちろん、釣りなど海のレジャーにお出かけされる方も天気や波とともに「あびき」にもご注意ください。

執筆者:西