天なびコラム

第6175話

2017年09月23日

昼夜平分時

本日は言わずもがな「秋分の日」です。
英語ではautumnal equinox、或いは単にautumn equinoxと言うのが一般的ですが、南半球では北半球とは季節が逆ですので、赤道越しの交流が盛んになった今日では、September equinoxという呼び方も定着しつつあるようです。equinoxの語源を遡るとラテン語のaequinoctiumで、接頭語がaequus(equal 等しい)、接尾語がnox/noctis(night 夜)、即ち昼と夜の長さが等しくなるとき、「昼夜平分時」を意味します。

地球科学、特に大気海洋にまつわる学術文献(英語)を読んでいると、このequ-で始まる単語をよく目にします。例えば、

・equation(方程式) 変数を含む等式。シンプルで美しくあるべき。センスが問われます。
・equator(赤道) 地球を南北に等分する線。地球科学の特異点。コリオリ力がゼロ、大気上端日射量が年平均で最大、重力加速度が最小、など。
・Equador(エクアドル) スペイン語で「赤道」の名の通り、南米赤道直下の国。天なびの不思議キャラ(?)、てなびんの好物のバナナで馴染み深い。(学術文献には出てこないか…)
・equilibrium(平衡) 気象・気候モデリング研究の先駆け、真鍋淑郎博士の原著によく出てきます。radiative-convective equilibrium(放射対流平衡)、two stable equilibria(二つの安定平衡解)など。

一方、夜を意味する-nox/noct-も目にしますが、それほどバリエーションがありません。せいぜいnocturnal(夜に活発な)、noctilucent(夜光性の)ぐらい。夜型生活をしているとnocturnal animal(夜行性動物)呼ばわりされます。noctiluca(夜光虫)を眺めながらnocturne(ノクターン、夜想曲)でも聴きましょう。

さて、語源通りなら、秋分の日には昼夜の長さが同じになりそうですが、実際には昼の時間の方が長くなります。これは主に、大気による屈折で地平線下の太陽が見えてしまったり(大気差)、太陽の(中心ではなく)上端が地平線と一致する時刻を日出・日没と定義しているからです(視直径による差)。

このへんで「秋から春にかけての冬半期は、地表付近の湿度も下がって、日出・日没を観測する機会に恵まれそうです。(皆さまもいかがでしょう!?)」などと締めて脱稿したいところですが、それだと面白味に欠けるので執筆後記でも。
aequinoctiumとか、昼夜平分時とか、そんな単語、使ったことはおろか聞いたこともなかったのですが、インターネットで調べたら、上のように書いてありました。便利な世の中ですね。またひとつ雑学が増えました。

執筆者:風来坊