天なびコラム

第6266話

2017年12月23日

レーザーで測ります

今年も12月10日(Alfred Nobelの命日)にノーベル賞の授賞式が執り行われましたが、2017年の物理学賞は米国の3人(Rainer Weiss博士,Barry C. Barish博士,Kip S. Thorne博士)に授与され、受賞理由は「重力波検出施設LIGOおよび重力波観測への決定的な貢献(decisive contributions to the LIGO detector and the observation ofgravitational waves)」でした。
重力波検出の原理を簡単に説明しますと、レーザービームが光源から反射を繰り返して受光器に届くまでの時間を計測するのですが、その間に重力波による空間ひずみが生じた場合は到達時間のズレが検出される仕組みです。距離にして「10のマイナス21乗メートルという超微小な空間ひずみを捉えるために、1辺が約4kmのL字型の真空光路と、高出力かつ安定なレーザー光源と受光器を(さらに書くと大勢の優秀な科学者と技術者も)用意したわけです。
アメリカはお金と土地を持ってますねーー。KAMIOKANDEのときは日本も同様のツッコミを受けたかもしれませんが…。

さて、気象・環境分野でもレーザー光が観測に使われています。

まず思いつくのが「視程計(transmissometer)」ですが、光源から受光器に届くまでのレーザー光の減衰や散乱を検出して、大気の見通し距離(気象光学距離、MOR:Meteorological Optical Range)や透過率を測ります。

次に思いつくものとしては、「ライダー(LIDAR:LIght Detection And Ranging or Laser Imaging Detection And Ranging)」が挙げられるでしょう。レーザーパルス照射に対する散乱光から、被照射体までの距離やその性質を調べる測器です。照射先の大気中で検知されるものとしては、雲粒やエーロゾル(黄砂、PM2.5等の大気汚染物質、スギ花粉など)があります。ライダーの中でも、雲底高度を測るものを「シーロメーター(ceilometer)」と呼んでいます。

また、被照射体が動いている場合には、反射光の周波数の変化(ドップラー効果、doppler effect)から被照射体の相対的な移動速度を推定できますが、この原理で広範囲にレーザーパルスを照射して風向風速を測定するものを「ドップラーライダー」と呼んでいます。電波で測るドップラーレーダーとは逆に、大気が乾燥しているほど遠方まで測定できます。

(その他、レーザーを用いた測器として、花粉計数器や海洋濁度計やプランクトン計数器などもあります)

これらの難点を挙げるとすると、やはりネーミングでしょうか。
親・祖父祖母・親戚のハートフルな和歌山弁に囲まれて育った自分には、ザ行とダ行の区別がつきにくくて、「レーザー」と「レーダー」、「ライダー」と「ライザー(riser,掘削術の一種)」、どっちがどっちなのか冷や汗をかきながらコラムを書いてしまいました。ややこしいわーー!!

執筆者:風来坊