天なびコラム

第6433話

2018年06月08日

一億総記者化

はじめまして。今日からコラムを担当するドローンです。

先日Twitterのタイムラインを眺めていると、土煙を巻き上げ移動する真っ黒の渦巻き状の風を捉えた動画が流れてきました。撮影者は、「え、竜巻?危なくない?」「なんでいきなり?」と驚きの声を挙げています。

これは6月4日に千葉県市川市で発生した「つむじ風」と呼ばれる現象を撮影した動画でした。これからの季節、グランドなど開けた場所では地面が暖められて上昇気流が生じ、突然「つむじ風」が発生することがよくあります。数十秒から数分で消えて無くなりますが、テントなどが飛ばされて怪我をすることもあるので注意が必要です。

それにしても、今に始まったことではありませんが、TwitterやInstagramなどのSNS上にUPされた写真や動画が、一気に拡散される様子を見ていると、個人の情報発信力の大きさを感じずにいられません。話題性のある投稿に対して、テレビなどのマスメディアが番組内で使用する許可を求めるリプライが殺到する光景もよく見られます。この行為に賛否はありますが、その議論は他に譲るとして、私が思うのは「その瞬間を捉えた写真(動画)」という点において、報道局の記者であっても、現場に居合わせた人には勝てないということです。

東京・三鷹市でひょうが大量に降り積もった事例や、草津白根山の噴火でスキー場に噴石が降り注いだ事例なども、初期報道で使用された写真や動画の多くは、個人がSNSに投稿したものでした。事例は災害に繋がるような現象だけではありません。大きな弧を描いた虹や、絹のように滑らかな雲海、空を翔ける龍のような形をした雲など、偶然に発生した美しい自然現象も、その場に居合わせた人により撮影され、瞬時にSNS上でシェアされます。

ある芸能人が不倫疑惑で釈明をしたときに“1億総記者化”という言葉が飛び出ました。悪いことはできないと自戒を込めて、そのように表現されたのだと思いますが、この“1億総記者化”、珍しい自然現象が大好きな私にとっては良い時代になったと思うのです。

一昔前は、珍しい自然現象が発生してもそこに中継カメラがあるか、偶然記者が居合わせなければ、広くシェアされることはありませんでした。しかし、今は誰か撮影してSNSにUPすれば瞬く間に話題となり、私のタイムラインにも流れてきます。結果的に、これまで見逃されてきたその瞬間の様子も、私たちは知ることができるようなったのです。

ただし、災害に繋がる特異な現象に遭遇した場合は、撮影よりまず自分の身の安全を確保してから。くれぐれも撮影に夢中になって怪我をしないように。これだけは、撮影する人全員が意識しておかないといけないなと思います。


執筆者:ドローン