天なびコラム

第6604話

2018年11月26日

フロンティア精神鍋

本田宗一郎は言いました「開拓精神によって自ら新しい世界に挑み、失敗・反省・勇気という三つの道具を繰り返して使うことによってのみ、最後の成功という結果に達することができる」と。

ウィキペディアは言いました「鍋料理は、惣菜を食器に移さず、調理に用いた鍋に入れたままの状態で食卓に供される日本の料理。卓上コンロやホットプレートなどで調理しながら、個々人の椀や取り皿あるいはポン酢やタレなどを入れた小鉢に取り分けて食べるのが一般的である。特に冬に好まれる。」と

11月に入ってから、私は鍋料理を作り始めました。
今年に入ってから自炊を始めた私にとっては自宅で一人で鍋を作るのを密かに心待ちにしておりました。
実家で家族団らんを感じながら食べていた頃、大学で友人とこたつに入り、むさくるしく鍋を食べていた頃。
もちろんいずれも美しく、美味しく、楽しい記憶でありました。
しかしながら僅かながらの不満も抱いておりました。それは具材です。
実家にいたころは痛み入るほどの親心により私の小鉢は野菜であふれかえっておりました。
敢えて言おう、「ありがとう!」と!でももっと肉が食べたかったのです。
大学時代はみんな揃って貧乏学生だったためどこの馬の骨もとい、鳥の骨ともわからぬ鶏肉を貪り、わずかな白米を奪い合いながら食べておりました。(一人暮らしの家の炊飯器が小さかったからです。)
敢えて言おう、「豚肉が食いたいのである」と。

と、長く懐古しましたが私が言いたいのはいよいよ自分好みの鍋が作れるぞというワクワク感がすごいということです。
私の理想の鍋はこうです。
出汁(フィールド)はキムチ鍋やチーズカレー鍋など濃い味のもの。
具材はエースストライカーの豚肉、サイドを固める水餃子他肉、そして余ったスペースを彩りを添えながら守備する野菜たち。
そして具材をワントラップで口へ捌くポン酢!
彼らが華麗に味を展開しご飯が進む!!
そして最後はうどん。

といった布陣を計画してニマニマしながらスーパーへ向かったのですが、いざ鍋の具材を探すといった目的をもって食材コーナーを練り歩いてみると何でもかんでもが鍋の具材になりそうに見えてくるのです。
鍋の素のパッケージの裏には「豚肉、白菜、きのこ、ネギ等」としか書かれておりませんでしたが、「等」の中にはたとえば豆腐も白滝も巾着もお揚げさんも入るではありませんか。
そのほかにも今まで見たことがないだけで実は鍋に入れてみると美味しい具材はたくさんあるのかもしれない!
積雪を見ると自分の足跡を残したくてたまらなくなる原始の時代の先祖から脈々と受け継いだ前人未到の領域へのフロンティア精神。
理系であるからには新たな発見のためには無数のトライアンドエラーも厭わない!

ということで、冬の間はずっと鍋。具材は毎回新しいものに挑戦していくことにしました。

現在二回鍋を作ったのですが結果として「ベーコンは豚バラのかわりにはならない」。豚肉だし安売りしてたからと思って挑戦しましたが、ベーコンは塩漬けが完了済みなのでどんなに出汁で煮ても味が付きませんでした。ベーコン単体で食べている時と味はほぼ一緒でした。
「きゅうりの漬物も鍋には合わない」。冷蔵庫の中で賞味期限が迫っていたので入れてみましたがこれは漬物で味がすでについているからと云う理由ではなく、シンプルに「きゅうりがぬくい」という違和感が私の口に合いませんでした。

暖冬をもたらすほどの鍋と私の熱い戦いはまだ始まったばかりです。


執筆者:くもおとこ