天なびコラム

第6626話

2018年12月18日

ごめんよ、バイアス。

前回のコラムで「正常性バイアスに打ち勝たなければ」と書いたところ、「でも、私達は大なり小なり正常性バイアスにすがって生きていますよね」というご感想を頂きました。正常性バイアスにすがる?と一瞬戸惑ったのですが、考えてみると確かにその通りのような気がします。

たとえば毎日の通勤電車の中で、「同じ車両に刃物を隠し持った人がいないか」とか、「テロを企てていそうな不審人物がいないか」とか、そんなことは私も気にしちゃいないわけです。もちろんその可能性があることは理解していますが、そんなことまで心配し出したらきりがありませんし、心配したところでどうにもならなそうですし、なによりたのしくありません。

ですから前言撤回です。正常性バイアスくん、君は何も悪くない。いつも助けてもらっているのに、悪者にするような真似をした私を許してほしい・・・問題はきっと、私達を含めた防災情報を出す側にあるのでしょう。正常性バイアスに浸かった日常から非常事態へと切り替わるスイッチは誰にでもあるはずなのに、それに触れられるだけの信用を勝ち取れていないという、ただそれだけのことのように思えてきました。

「何かあった時の保身のために大袈裟に言っているのだろう」とか、「注目を集めたいがために騒いでいるのだろう」など、防災情報を疑ってかかる理由を見つけるのは簡単です。私達がほんとうに打ち勝つべき相手はこちらのほうで、そのための秘策などはなく、地道で愚直な取り組みを続けるしかないのかもしれません。


執筆者:ヒョウタン