天なびコラム

第6674話

2019年02月04日

節分の豆はどこへ?

ハトだと思います。
私が子供のころは節分の翌朝になるとハトやスズメが「ヒャッハーー!!ボーナスタイムやでぇ!!!」という声が聞こえてきそうなくらいの勢いで地面に群がって撒かれた豆をついばんでいました。
私は子供のころ都心や商業地域ではなくただの住宅が寄せ集まってできた町に住んでいました。人の行き交いの多い地域では手持ちのパンの屑などを与えてくれる人がいますが、住宅街ではわざわざベンチに座りハトに餌を与える人もほとんどおらず、日々自給自足で生きているハトからすれば地面に餌が落ちまくっている日なんてのは相当レアでラッキーな日だったことでしょう。

そういえば大阪に越してきてからハトの鳴き声を聞かなくなった気がします。
昔は夜中や明け方に「ホーホー、オッオッーーー!ホーホー、オッオッーーー!」という単調なベースリフのような鳴き声が延々と繰り返されていました。
なぜ最近は聞かなくなってしまったのだろう?大阪のハトは鳴かないのか?あの鳴き声は子供にしか聞こえないティンカーベル的なモノなのか?気になって調べてみたところ、あの鳴き方をするのはキジバトという種類のハトで日本全土に生息しているものの、主な生息地は市街地や住宅地、農耕地、森林など。公園などでよく見かけるドバトとは別の種類だということがわかりました。

子供のころ見ていたハトと大人になってから見ているハトがまさか別の種類のハトだったとは!
そういえば毎日のように見ているハトにも知らないことがいっぱいあるぞ。と思い調べてみるとまず驚いたのがハトはミルクで子どもを育てるということ。
えっ!どっからのミルク!?鳥類って母乳出るんやっけ!?
なんと口の中から出ており、ピジョンミルクというのだそう。このミルク成分は主にたんぱく質で栄養価が非常に高く、人間でいうところのアスリート用のプロテインのようなもの。しかもハトはメスだけがミルクを出すのではなくオスもこのミルクを出すことができ、両親がこの高栄養価のミルクを雛に与えるため、ハトの成長速度は非常に早く、雛はたったの約25〜40日程度で成鳥になるのそうです。
「そういえばハトの雛とか子育てしてるとことか見たことないなぁ」というのもハトの成長速度がとても速かったからなんですね。

ちなみにハトの卵って食べられるのか?という疑問も抱いたので調べてみるとハトの卵は海外では一部のブルジョワジーが食べる高級食材として扱われているほど美味だそうなのです!
我々日本人はハトサブレ以外でハトを口にする機会がめったにないため(関西の某有名大学の某最古寮に住む方々は日常的に食しているという噂を聞きますが)あまり知られていないのですが実は海外だと肉も卵も結構な高級食材。
じゃあいっぱいいるし獲って食うか!と思う方もいらっしゃるかと思いますが野生のハトの肉も卵も衛生面においては全く保証はなく、さらに言うならば鳥獣保護法の違反になるので許可なく殺傷したり捕獲してはいけないそうです。

次に日頃から気になっていたのは、ハトがヘドバンさながらに頭を前後に振りながら歩いているアレ。
「酔うやろ」と思いながら見過ごしていましたがあれは“首振り歩行”と呼ばれる行動で、頭部だけをなるべく長時間同じ空間内に静止させておくことによって視覚情報を安定して得られるようにしているのです。なのでベルトコンベヤーを逆向きに歩かせて、歩いても歩いても周囲の映像が変わらないようにするとヘドバンせずに歩くそうです。ベルトコンベアを逆走するハト。それはそれで見てみたい気もしますが鳥獣保護法がそれを容易には許さない!

最後に気になっていたのはハトがよく何もない地面をついばんでいるアレです。
我々には見えないサイズの小さい虫でも食べているのか?それともあまりにも餌をもらえず空腹に耐えかねて地面に餌が落ちている幻覚でも見ているのかあぁ哀れな!と思っていましたが、地面をついばんでいるのは石を食べているそうなのです。
え!なおのこと哀れじゃないか!とは思わなくて大丈夫です。
ハトは胃袋がムッキムキの筋肉でできており、そこに石をため込みその石を胃袋の筋肉で動かすことによって食べたものをすりつぶしているのだそうです。

今まではパン屑に群がり交差点に大量にフンする奴等。くらいにしか思っていませんでしたが、こうやって思い返してみると「ベースリフを口ずさみ」「ヘドバンをしながら歩き」「プロテインが主食」「親元を離れるのが早い」「鍛え上げた胃袋で石を食う」・・・ぉぅ、なかなかロックでハードコアなプロレスラーに見えてきま・・・せん?


執筆者:くもおとこ