天なびコラム

第7120話

2020年04月25日

残雪の芸術

時折まだ雪の降る所もあるようですが、標高の高い山では雪解けが進んでいる頃かと思います。
徐々に雪が減っていくさまは、春本番に向かって季節が進む様子そのものとも言えるでしょう。

雪解けが進んで地面が少しずつあらわになった山は、麓から見るとコントラストが際立ち、一種の芸術のようにも見えます。
場合によっては、山肌や残雪が何かの形に見えることもしばしば。
昔の人達はその形を動物や人に見立て、農作業の目安にもしていたそうです。
「雪形(ゆきがた)」と呼ばれるもので、4〜5月頃の新潟県や長野県を中心に雪形が見られるスポットは今でも多数存在します。

富士山にも有名な雪形があります。
雪解けが進むと、山梨県側で八合目の辺りに鳥のような形の残雪が現れることが。
雪形の中でも「農鳥(のうとり)」と言われているものです。
麓の富士吉田市では、「農鳥が見えた」と市から発表することもあるほど愛されています。
年によって微妙に形が変わり、丸っこいヒヨコのような時もあれば、山頂に向かって羽ばたいていくTwitterのマークのような時もあるようです。

今年の農鳥の報告はまだありません。
先日関東を大雨が襲ったタイミングで、富士山は逆に雪が増えました。
このお陰で農鳥が現れるのはまだ先になるかと思われます。

残念ながら今年は農鳥を見にお出かけという訳にはいきませんので、自宅で富士吉田市からの農鳥の便りを待つことにします。
富士山に限らず高山の麓にお住まいの方も、山と残雪が織り成す雪形という芸術作品を楽しみにしているのではないでしょうか。
麓の方々が羨ましいと思う次第です。


執筆者:そふぃー