天なびコラム

第7200話

2020年07月14日

揺れる

前回私が担当いたしました6月29日のコラムで、飛行機の揺れについて書きましたが、その内容に関して操縦士の方からご指摘をいただきました。
一部不正確な記述があるとのことで調べましたが、今まで私が少し勘違いしておりました。
まず、ジェット気流は概ね高度7000m以上に発生するもので、それによる晴天乱気流も、プロペラ機が飛ぶ高度5000m付近にはほとんど影響はありません。
また、ジェット気流を「横切る」ではなく「下を横切る」というのが正確な表現です。
もう一点、乱流の影響の受け方について。
なんとなくのイメージで、翼長が長いほど小さな乱流が無視出来てより安定するだろうと思っていたのですが、そう簡単な話ではないようです。
地震の長周期振動で高層ビルが大きく揺れるように、乱流の周波数がうまい具合に合ってしまうと翼長が長くても乱流の影響を大きく受けることがあるそうです。
周波数以外にも機体構造や形状、速度なども複雑に関係し、単に翼長が短ければ乱流の影響を受けやすいということではないようです。
以上、小型プロペラ機に対して誤解を与えるような表現になってしまったことを訂正し、お詫び申し上げます。

飛行機に限らず、撹乱の影響を受けて物体がどう動くかということについては、私が大学で研究していたことも絡んでくるのでもう少し書かせていただきます。
有名な例では、自由に動く板の上にたくさんメトロノームを置いて揺らすと、揺らし始めはバラバラでも、板の振動を介して、リズムがそろうという現象があります。「メトロノーム 同期」と検索すると色々出てきます。
飛行機のように、揺れないようにしたい場合は、メトロノームが乗っている板を動きにくいようにすれば良いのですが、飛行機は空中にあるので、 機体構造や形状を変えるなどしてなんとか対応します。
それで、どれくらい揺れにくくすれば大きな揺れが発生しなくなるかの境界は、実は、相転移や臨界現象と呼ばれる、現代の最先端の物理学でもよくわかっていないことがたくさんある領域なのです。
とは言っても、できるだけ安全に飛行機は設計、整備されたり、できるだけ安全な航路を選んだりすることによって 、飛行機は公共交通機関の中で一番安全と言われています。
操縦士さん始め、飛行機の安全を毎日支えている人たちは本当に尊敬します。


執筆者:ありんこ