天なびコラム

第7344話

2020年12月05日

ストーブリーグ

いつの間にか日本の野球が終わってしまいました。今年はコロナウイルス感染症の影響で例年よりも短いシーズンとなり、物足りないと感じた方も多いと思います。
シーズンが終わると同時に始まるのが選手の移籍や加入、退団が行われる“ストーブリーグ”です。
日本の場合、新たに入団する選手を選ぶドラフト、次に来季の戦力構想から外れる人を退団させる自由契約選手の公示、最後に選手が自由に移籍できる権利を取得した選手が所属先を決めるFA宣言が主にストーブリーグに当たります。
一般の社会人に例えるとドラフトは新卒採用、自由契約は解雇、FA制度は転職といったところでしょうか。
そして今日12月5日はFAの権利を持った選手がその権利を行使する旨を公示する日です。
今年のFA市場は目玉選手の多くが早期から残留を表明するなど、ストーブのように熱くならないと観測されていますが一体どうなるでしょうか?
日本ではかねてから選手の移籍がアメリカのメジャーリーグ(MLB)と比べて少ないと言われています。
その理由としてはFA権を取得するまでの期間が長い(在籍期間が7〜8年)こと、日本人特有の“チーム一筋”が好まれる習慣が要因であるとされています。
それによりチームごとに戦力の偏りが生じることが指摘されています。
MLBでは戦力の偏りを防ぐために様々なルールが存在します。
その一つ、選手の年俸の偏りを防ぐために通称“Luxury Tax”(ぜいたく税)といわれる制度があり、チームの総年俸が基準額を超えると、超えた額に対して税率が掛けられる制度があります。
これにより年俸が高騰した選手を放出したり、逆にどうしても優勝したいチームは課税覚悟で有名選手を獲得したりすることが多くなります。
また有名選手を放出したチームは浮いたお金で多くの将来有望な若手を獲得し、数年後の優勝を目指すといった好循環が生まれる仕組みが形成されています。
まるで地球上の熱エネルギーの不均衡を解消する大気大循環のようですね。
「資本主義の国アメリカ」でこのようなユニークな制度があることはとても興味深いです。
日本でもストーブリーグがもっと過熱し、シーズンの最後まで優勝争いをするような展開になることを切望しています。

執筆者:くじらのお