天なびコラム

第7900話

2022年06月14日

シルクと雲

全国の週間予報を眺めると、今週から傘マークが目立ち始めました。広い範囲で梅雨入りが発表されそうです。
ところで「コットン→下 ウール→中 シルク→上」と書くと何を連想するでしょうか。とても天気に関心のある方は「雲」と答えるかもしれません。
コットンは綿。綿雲は積雲で気象の観測では下層雲に分類されます。ウールは羊毛。羊雲といえば中層雲である高積雲です。そしてシルクは絹。絹雲は上層雲の「巻雲」のことで、過去20年あまり気象庁の十種雲形の名称として使われていました。
巻雲は学名の「cirrus(シーラス:ラテン語)」を由来としています。英語ではcurl(カール)と呼ばれることからわかるように「巻」の字を当てることが適当でした。ただ戦後に漢字の乱用を防ぐため当用漢字表が制定され、「巻」は「ケン」と読めなくなりました。字をそのままにして「カンウン」と読み方を変えるか、それとも字を変えるか・・・気象庁は後者を採用し、1965年4月1日から「絹雲」に改めました。絹の音読みは「ケン」ですし、雲のイメージとも合っています。その後、1981年に当用漢字表が廃止され読み方の制約も緩和されました。そうすると、もともとの意味である「巻」の字が再び使われ始め、気象庁も1988年に「絹雲」から「巻雲」に戻しました。
どの雲もそれぞれ魅力がありますが、梅雨空が続くときれいな「シルク」を見る機会は減りそうです。梅雨の中休みに現れてくれることを心待ちにしています。

執筆者:西