天なびコラム

第7901話

2022年06月15日

雲粒には核が必要?

大気中に細かな粒子があると雲や霧ができやすい、というのは、気象好きからしたら常識の話でしょうか。
それではなぜ細かい粒子があると、雲粒ができやすいのでしょう?
今日は私自身気象の勉強をしていて、個人的に「へ?」と思ったことをお話ししようと思います。

これには、きれいな空気中で雲粒が作られる場合のメカニズムを考える必要があります。一般的に「湿度100%」と言うと、空気中の水蒸気が凝結して水ができ始める湿度として知られていますが、実はこの湿度100%、というのは、液体の表面が平面である場合の飽和水蒸気圧をもとにしています。もちろん雲粒は粒なので球状です。液体表面が小さな球のようによく曲がっていると、平面の時に比べて飽和水蒸気圧が高く、より気体の状態であろうとするのです。そのため、きれいな空気中での雲粒の生成は、湿度100%をさらに超えた百数%の飽和度が必要になります。しかしながら現実大気ではそのような状態は観測されない、と言われています。

さて、空気中に塵などの粒子がある場合にはどうなるのでしょう?粒子が水分子を引き付けやすい性質を持っていると、水分子は何もない状態から雲粒を作るよりは、粒子にくっつく方が、水表面の曲がり具合を少なくすることができます。そのため、一から完全な球を作るよりは飽和水蒸気圧が小さくなります。このように、空気中の微粒子は凝結に必要な飽和度を下げる働きがあるのです。また、粒子が水に溶けやすい性質を持っていると、純水に比べて飽和水蒸気圧は低くなり(高校で蒸気圧降下というワードを聞いたことがあるかもしれません)、水蒸気が凝結しやすくなる、という効果もあります。このように、雲粒を作り出すときに核となり、水蒸気が凝結する手助けをする微粒子のことを、雲凝結核と呼んでいるわけです。

なぜ水の表面が曲面のほうが平面に比べて高い飽和水蒸気圧になるか、という部分については、誰もが一度は耳にしたことがある表面張力が関わっているわけですが、また機会があればお話しさせていただければなと思います!いずれにせよ、知識というのはどこまでも掘り下げることができて、楽しみが尽きませんね。

執筆者:シャチハタ