天なびコラム

第7922話

2022年07月06日

わたしの夏休み

子供の頃毎年夏に帰っていた母方の実家へ、先日久しぶりにあいさつに行ってきました。
私の育った実家も決して都会ではないですが、母方の実家はさらに輪をかけたような大分の田舎です。徒歩圏内に郵便局やスーパーと言った施設はひと通りあるものの、大きな買い物は車で山を越えなければならないような、今も昔もそんな規模の町です。毎年夏休みになるとそんな町に一週間、長いときには夏休みまるまる過ごしていました。その時期にしか会えない同年代の子と一緒にラジオ体操をして、プールに行って真っ黒になり、疲れた体を温泉で温め、祖母と一緒に障子を張り替えて…。今でも夏になると大分の家の匂いを思い出します。ですが、大学生以降自分の生活で忙しくするようになってから、昔のように大分で長く過ごすことはなくなっていました。

今回の訪問もまた、近況報告がてらご飯を食べて一泊する程度の短いものでしたが、その短い間にもたくさんの変わったものに驚かされ、変わらないものに懐かしさを覚えました。より耳は遠くなったもののipadを使いこなす祖母、いつ帰ってもニコニコ出迎えてくれる無口な祖父、お米も炊けなかったのに退職後家事に精力的な叔母、名前は変わったのに中身は何も変わらないスーパー、瓶詰めされた牛乳の提供がなくなった温泉、そして、苗字が変わってノンアルコールビールを飲むようになった私。「人生そんなもん」と仏壇の写真の曾祖母が、私達を見守ってくれているような不思議な感覚。ノスタルジックという言葉では簡単には言い表せない、一足早いわたしの夏休みでした。


執筆者:シャチハタ