天なびコラム

第7943話

2022年07月27日

セミの幼虫

ちょうど梅雨が明け、ちらほらとセミの鳴き声がするなと感じていた頃、とことこ歩く羽化前のセミの幼虫と出会いました。
その日の天気は晴れ、日没後に近所を散歩していた時の出来事です。

セミの幼虫は、地上に出ると羽化する場所を探してしばらくウロウロ動き回るそうです。
まさにそのタイミングでの遭遇でした。

木の幹や枝につかまって羽化の準備をするそうですが、そこは一面コンクリートでした。
知識がないので、眺めることしかできない無力さになんともいえない気持ちになりました。
セミの幼虫は、地上に出てこれたからといって成虫になれるわけでもなく、羽化に失敗してしまう確率は6割程度にもなるそうです。

目の前で一生懸命羽化の準備をしようとするセミの幼虫を見て、無意識のうちに応援している自分がいました。
最後まで見届けることができず、残念な気持ちのままその場を後にしましたが、無事に成虫となり元気よく鳴いたのだろうか…と時々思い出します。

毎年、セミの鳴き声を聞くとなんだか落ち着かず忌々しく思っていましたが、 今ではよく耳を傾けるようになりました。
あの日、心が揺さぶられたことを嬉しく思います。


執筆者:じゅうたん