天なびコラム

第7954話

2022年08月07日

音のない雷

ある日の夜、最寄駅からの帰り道の途中、急にカメラのフラッシュのような強い光が一瞬視界をよぎりました。
あまりにも急で何が光ったのか最初は分からず、近くの街灯が寿命寸前の蛍光灯のように点滅しているのかと思いましたが、煌々と光っており何も問題はありませんでした。
直後にまたフラッシュが走り、今度は空が一瞬光ったのを確認しました。

正体は雷でした。

しかしこの雷、その後も何度か光ったものの1度も音が鳴ることはありませんでした。
19時頃という今の時期だとほんのり明るさが残っている時間帯で、逆光で黒く見える雲と共に空全体が一瞬光を放つさまは、音がなかったせいか恐怖感よりも美しさを感じました。

光の速度と音の速度に違いがあることから、通常の雷は光った後に音が遅れて届くことが一般的です。
これが光っただけで鳴らなかったということは、音が届かないほど遠くの位置で雷が発生したということが考えられます。
実際、雷の音が聞こえるのは10km程度離れた所まで、音が聞こえず光っただけの場合は4〜50km離れているとされています。

また、音が聞こえないほど遠かった説とは別に、雲放電説もあります。
落雷とは異なり、雲の中や雲と雲の間で発生するものを雲放電と言います。
落雷よりも音が小さく地上まで音が達しない場合もあるそうで、雲放電だった可能性も十分あり得ます。

雷雲の実況をその場で天なびで確認したかったですが、荷物で両手は塞がり、スマホのバッテリーも僅かだったので呆気なく断念。
結局どちらだったのかは謎のまま終わりました。

少なくとも私の住まいの方ではあまり見かけない、珍しい現象でした。
見かけたらその荘厳さを是非体感して下さいと言いたいですが、雷自体が危険なことに変わりはなく、見惚れ過ぎには禁物です。
身の安全への配慮もどうか忘れずに。


執筆者:そふぃー