天なびコラム

第8356話

2023年09月13日

毒草の思い出

比較的朝夕が涼しくなり、夏の日差しに葉焼けしていた道端の木々や草花たちも一息ついているように感じます。
秋の植物といえば実りの秋としてブドウや梨のような甘い果実、コスモスや金木犀といった可憐な花々などが思い浮かびますが、個人的に印象深い思い出が多いのは「毒草」のたぐいです。

子供の頃に山への遠足で見たヨウシュヤマゴボウは、どうして「ヤマブドウ」ではなく「ヤマゴボウ」なのだろう?と不思議に思うような鮮やかな紫色の実が房状に実っている植物でした。実際には根が食用のゴボウによく似ているのです。
毒草だと言われているのに、皆が手を濃い色の果汁まみれにして遊ぶのをはらはらしながら見ていた記憶があります。

涼しい山道にひっそり咲いていた紫色のトリカブトを見かけたときは、有名な毒草がごく普通にそのあたりに生えていることにおどろき、見た目が似ているといわれる食用のニリンソウやヨモギと見比べてみて、自分にはまったく見分けられる自信がないことに改めて恐ろしく思いました。

地元の通学路に沢山植えられたヒガンバナを見るたびに、水につけて毒抜きをすれば食べられるという話を思い出し、どんな味だろうか?シャキシャキして食いでがなさそうだな・・・(実際に食べられるのは球根)などと食べることばかりに想像をめぐらせていたことを思い出します。

毒草は想像力をかきたて、見るだけでスリルを感じさせる効果があるように思います。
危険な毒草に惹かれるのは、知識を身につけて生き延びるための生存戦略でもあるのかもしれません。

秋にはきのこや山菜などおいしい山の幸が目白押しですが、万に一つの誤食などがないよう気を付けていきたいものです。


執筆者:みみた