天なびコラム
第8358話
2023年09月15日
雲の展望台
私は飛行機に乗るのが好きです。それは、ほかの乗り物とは違った特別な感じがして興奮するからとか遠出する高揚感と相まって胸が躍るからという理由もありますが、一番の理由は景色を眺めるのが楽しくて飽きないからです。
上空から街の様子を見渡したりランドマークを見つけたりするのも面白いですし、なんと言っても巡航中に展覧会のようにさまざまな雲が次々に現れるのには夢中になってしまいます。
いまの時期ですと、「展覧会」の目玉はやはり積乱雲でしょうか。
写真で紹介されるお手本のような鉄床雲を真横に見るのは圧巻です。雲頂は太陽に照らされてぎらぎらと輝いてる一方で、雲底は怪しげな真っ黒です。大量の熱や水蒸気を上空へ運ぶエンジンのような存在だけあってエネルギーがあふれていて荘厳さを感じます。積乱雲の周囲に、鉛直方向の雲の発達が押さえられて水平方向に吹き出しはじめた巻雲が広がっていることがありましたが、それは仏像の装飾の光背のようでした。
空の上からでなくても、見上げれば雲はいつでも観察できるものです。これから秋になってくると空が澄んで雲を眺めるには絶好のシーズンです。自宅のベランダや見晴らしのよい高台など、お気に入りの「展覧会場」を見つけて雲を追いかけてみるのはいかがでしょうか?
執筆者:きぼりぐま