天なびコラム

第8404話

2023年10月31日

目黒のサンマ

秋の深まりと冬の気配を感じる時期となってきました。
「食欲の秋」と言いますが、少しずつ寒くなってくると、食欲が増してくるのは私だけでしょうか?
秋は、サンマにカツオ、寒ブリなど、おいしい魚が目白押しで、スーパーでどの魚を買おうかといつも迷ってしまいます。

秋の魚について面白い話がないかなぁと探していると、私が小さいころ、某教育番組で「目黒のサンマ」という落語があることを思い出しました。

あるお殿様が、「目黒」まで鷹狩りに出たところ、庶民が焼いていたサンマの炭火焼の匂いがしてきました。
どうしてもおなかがすいていたお殿様はそのサンマを献上させ、たいそうお気に入りになりました。
屋敷に戻ってから、また、サンマが食べたくなり、家来に頼んでみるも、庶民の魚のサンマは屋敷になく、家来が「日本橋」まで買いに行きました。
調理の際は、健康に悪いからと、蒸して油を落とし、食べやすいよう骨をすべて抜き、ボロボロになってしまい、お殿様はおいしく食すことができませんでした。
お殿様はどこで買ってきたのか?と家来に聞くと、「日本橋で買ってまいりました」と答えたので、「サンマは目黒に限る」、という的外れなことをいって、オチが付きます。

小さい頃は、調理方法を知らないと、おいしく食べられないという話かと思っていましたが、調べてみると、日本橋よりも海から遠い目黒でとった魚がうまいと信じて断言することがオチだそうです。
小さい頃の純粋な感覚に思いをはせながら、今日はサンマを買おうと思います。

執筆者:うらしま