天なびコラム

第8436話

2023年12月02日

噂の寄生虫

先日、あん肝が安値で売られているのを見付け、今年もこの時期が来たかと飛びつき購入しました。
珍味が私の好みに合うのか、ホルモンやレバーなどのいわゆる臓物が元々好きで、あん肝も何年か前に初めて食べてその美味しさを知りました。
今まさに旬を迎えている文字通りの珍味です。

生臭さが残りやすいあん肝は下処理の工程が多く、面倒ではありますが一応レシピ通りにこなしました。
下処理の1つである塩をもみ込む工程の時のこと。
もみ込んだ後暫くあん肝を寝かせていると、まな板の上で細長いナニかが動く様子が見えました。

こ、これが噂のアニサキス…初めて見たのにすぐ分かりました。

5〜6年ほど前から一般にも知られるようになり、その危険性は多くの方がご存知かと思います。
改めてまとめますと、アニサキスは海の生き物に棲みつく寄生虫の一種です。
魚の死後も、寄生先を内臓から筋肉に移動してしぶとく生きていられる生命力の強さがあり、生きた状態で人間の体内に入ると食中毒を引き起こす恐ろしい存在です。

そんなアニサキスの弱点は加熱または冷凍で、-20℃以下に24時間凍らせるか70℃以上(60℃なら1分以上)で加熱すると死滅するとされています。
しかし、それ以外で確実に死滅させる方法がなく、鮮度重視で冷凍せずに入荷されたお刺身や低温調理で加熱の足りない料理など、どうしてもアニサキスによる食中毒のリスクが消えない場面もあります。

魚の内臓を家庭で生食することはまずないですが、本物を見るとやはり恐ろしく…レシピでは20分蒸すとなっていたのを急遽30分に伸ばしました。
十分に蒸したあん肝を、個人的にはポン酢よりも好きなだし醤油で美味しくいただき、食中毒なく元気に過ごしています。

こんな話をするとあん肝をお勧めしても気が乗らないかもしれませんが…今の時期本当に安く手に入るので、十分に加熱して旬の味を堪能していただきたいものです。
アニサキスのリスクはあん肝に限りません。
安全には配慮しつつ、あん肝以外にもたくさんある寒い季節の旬の味をお楽しみ下さい。


執筆者:そふぃー