天なびコラム

第8501話

2024年02月05日

心の天気図

気象の世界に私ももう長く携わっていますが、どれだけ技術が発展してきても、いまだに天気図は凄いとモノだと感じています。

天気図には色々な気象要素が記入されていますが、代表的な情報が気圧です。地図上に等圧線が描かれ、高気圧の位置が分かることで、大まかな天気や風の様子を把握することが出来ます。

気圧とは簡単に言うとその場所の空気の重さを表します。当然目に見えるものでもなく、その場に居たからといってその重さを感じられるものでもありません。しかし、気圧計を用いて世界各地で観測した気圧の値を地図上で繋ぎ合わせることで、気圧配置を知ることが出来ます。冬場だと西高東低の冬型の気圧配置や南岸低気圧型の気圧配置が有名ですよね。これからの季節、天気図上に日本海低気圧が現れると、春一番のような暖かな南風が吹いて春の訪れを少しずつ感じるようになります。体感ではほとんど何も感じることの無い空気の情報を形にして、気象を把握することが出来ることって、改めてすごいことだなと思います。

思えば、人の心も同じようなものかもしれません。私達は心の中で常に色々なことを考えていますが、それは他人からすると見えるものでもなく、感じるものでもありません。長い付き合いの間柄なら、なんとなく透けて見えることはありますが。

人の心を天気図のように形にするのなら、それは言葉や文などでしょうか。「ありがとう」や「ごめんなさい」の気持ちは、誰しも持っていると思いますが、思っているだけでは相手には伝わりませんよね。言葉に出して形にして初めて相手に伝わりますし、受け取ることも出来ます。
人間関係も長く続けていると、親しかった人とでもぶつかったりすれ違ったりすることがあるかもしれません。相手の心の内を自分の心の中だけで考え始めると、なぜかどんどん悪い方向に考えることも、、。そんな時は勇気を出して自分の心の内を本音で伝えたり、相手の思いを聞いたりすると、意外とすんなり和解出来たりもします。

人と人とのコミュニケーションが形として見えづらい時代かもしれませんが、ほんの少し意識的に心の中の思いを言葉や文章に変えていくだけで、見えない不安、分からない不安、不必要な不安が取り除かれ、周りの人達と繋がっていけるのではないでしょうか。見えないものを形にして理解しようとするのは気象も心も同じ。言葉や文章は、言わば「心の天気図」なのかもしれません。

執筆者:そら