天なびコラム

第8609話

2024年05月23日

はえ

タイトルにある「はえ」とは、うるさく飛び回る虫のことではなくて、今回の話題は風の呼び名です。

先日、長崎県で列車に乗っていて「南風崎駅」を通りました。この駅、読みは「はえのさき」です。すんなりと呼んでもらうのはなかなか難しそうです。
菅原道真の「東風吹かば」の歌は有名なので、「東風」と書いて「こち」と読むことには多少馴染みがあろうかと思いますが、「南風(はえ)」はあまり知れ渡っていないのでは?という気がするのは私だけでしょうか。山陰・九州以南ではよく使われる語のようで、西日本なら通じるのかもしれませんね。宮城、北海道と住んできた私には縁遠い言葉です。

そもそも、北日本では南風のあたたかさに心地よさを覚えるという体験の記憶が薄いです。その代わりといいますか、仙台には「西風」と書いて「ならい」という地名があったほか、岩手県内にも「西風(ならい)」という地が点在するようです。確かに、東北地方は冬の北西季節風のイメージが強いかもしれません。

ちなみに「北風」のことも同じく「ならい」と呼んだり、または「あなじ」と言ったりします。同じ風でも吹いてくる方角によっていろいろな呼び方があるのは面白いですね。
上で書いてきたように、単に方角の違いだけではなく地域的な特徴も表れているように思えます。遠くに雨雲を引き連れた「黒南風」の生暖かい九州の風に吹かれながら、風土のちがいを感じるのでした。


執筆者:きぼりぐま