天なびコラム

第8610話

2024年05月24日

ウォータールー橋、曇り

業務連絡メモに変な絵や図を添えて呆れられてしまう今日この頃、本物の絵画を参考にしようと思って、モネ展に行ってきました。
クロード・モネは連作「睡蓮」が有名で、美術の教科書にも登場する印象派を代表する画家のひとりです。実は私は去年ピカソ展にも行っており、大変感銘を受け、自分の絵や図が抽象的になってきたので、、、天候や季節を表現しつくしたモネの技巧と観察眼を次は学ぼうと思った次第です。
モネ展では「睡蓮」をはじめ、感銘を受ける絵画がたくさん集まっていました。中でも凝視してしまったのが、連作「ウォータールー橋」です。連作なだけに、さまざまな天候や時間の異なったウォータールー橋の絵が何枚もあります。モネが宿泊していたホテルからテムズ川の下流方向、南東を向いて描かれており、モチーフの橋そのものより、光が生み出す色彩の微妙なハーモニーが主役となっているそうです。
その中に、曇りを描いた作品がありましたが、『曇りというより・・・スモッグなのでは』と思わせるような、地上まで霞んだ部分をのぞき込むと、霞の向こうに工場の煙突や煙が複数描かれていました。モネの観察眼と表現力からして、間違いなく大気汚染の様子です。
イギリスでは、19世紀以降、産業革命そして石炭燃料の利用により大気汚染が進行しました。1952年にロンドンで著しいスモッグが発生し、呼吸器疾患などで1万人以上が死亡した、史上最悪規模の大気汚染公害事件が有名です。モネは1900年から数年間この連作を描いており、大気汚染をいち早く捉えていたと考えられます。
実は有名な絵画に登場する空と大気汚染に関しては、他の画家の作品でも考察がされており、大変興味深いものです。自分の絵や図がマシになるかはさておき、絵画鑑賞は奥が深くあらゆる学びがあると改めて思いました。


執筆者:けもの道担当