天なびコラム

第8614話

2024年05月28日

海の中も春から夏へ

5月も終盤となり、気温も上がってきました。
私たち人間も過ごしやすい季節になりましたが、海の中も着々と夏に向けて準備が進んでいます。
今回は、よく食卓に並ぶ、夏が旬の美味しいお魚、「スズキ」の気持ちになって海を見てみましょう。

冬の寒い中に頑張って産卵を終えたスズキは、この初夏の時期は体力を回復させる絶好の時期になります。
地域にもよりますが、産卵で体力を使い切った真冬から3月ごろまでは、あまり泳がなくても簡単に食べられる「ゴカイ(ミミズのような細長い生き物)」などを食べます。
ですが、やはりスズキもグルメなので、元気になってきた4月や5月あたりからは、おいしい小魚を追い掛け回すようになります。
人間と一緒ですね。

筆者は釣り人なので、このスズキを食べたくて必死にルアー(疑似餌)を投げますが、この春の時期は、スズキがゴカイを食べているのか小魚を食べているのか、はたまた別のエサを食べているのか、真剣に考えます。
海水温、潮の満ち引き、流れ、濁り、光…ありとあらゆるデータが頭を駆け巡り、脳内は大忙しです。

スズキさんも生きるか死ぬかの世界で生きているので、こちらの手を読んできます。
ルアー(疑似餌)が少しでも違和感のある動きを見せたり、人間の気配を察知されたら最後、食べには来てくれません。
人間はひたすら気配を消して、ルアーという偽物に魂を吹き込むことだけを考えます。

そんなこんなで、釣れるときもあれば釣れない時もある。それが釣りの面白いところでもあります。

普段仕事をしていたり、都会で生活をしていると、命の尊さを忘れかけることがあります。
ですが、スズキも必死に生きて、敵から逃げて、餌を食べて、ときには人間に捕まって、食卓に並びます。
これから夏にかけて旬になっていくスズキですが、旬を迎えるころには、 命の駆け引きがあったことを思い出して、おいしくいただきたいものです。


執筆者:うずしお