天なびコラム

第8640話

2024年06月23日

巻き戻したい穏やかな景色

このコラムでもちょこちょこ取り上げるぐらいMr.Childrenが好きです。Mr.Childrenといえば、未来への力強い希望を歌う曲もあれば、家族の温かさを歌う曲、純粋な恋愛の曲もあり、どれも好きな曲ばかりなのですが、中には本当に切ない失恋の曲もあります。

その中でも私が好きな曲が「水上バス」です。穏やかな川の情景。観光客に混じって水上バスの中から笑って手を振る彼女。彼女と過ごす日のことをいつでもシミュレートして、彼女への思いを大きく募らせていく中、次のフレーズとともにその幸せな時間が崩れます。

『川の流れのように愛は時に荒れ狂ってお互いの足をすくい始める』

恋愛が終わりに向かう様子を川の流れに例えたこのフレーズがとても印象深いです。
穏やかで平和だった川が、ほんの僅かな時間で荒れ狂うことが実際にあります。例えその場所で豪雨がなくとも、周辺で豪雨があれば、気付かぬうちに水は増え、気付かぬうちに足元をすくい始めることもあります。水位が膝下までくれば、もう身動きもままなりません。

川の水位の上昇は、雨雲レーダーや予測、指定河川洪水予報などをしっかり見ていれば予見をすることができ、足をすくわれる前に身の安全を守ることが出来ます。ですが、人間関係ですくわれる足はどうでしょう。

人の心は見えづらいものです。自分の心ですら自身で完全にコントロールできているわけではありません。さらには心は複雑に揺れ動きます。異なる2つの心の僅かな揺らぎが、気付けば足をすくう濁流と化していたりするのかもしれません。

「水上バス」の曲のラストは、穏やかだった景色を巻き戻すべく、川の流れに沿って自転車を漕ぐ描写です。一度足をすくわれて濁流に飲み込まれると、抜け出すことはままなりません。だからこそ足をすくわれる前に細心の注意を払う必要があります。注意を払う先は、本当の川の流れであれば防災情報ですし、人間関係であれば人の心。日頃から相手の言動に注意を払って見ていれば、相手の僅かな心境の変化にも気づけ、その先の濁流を防げるかもしれません。

あの時にそう出来ていればと思う、巻き戻したい穏やかな景色が私にもあります。私の場合「水上バス」の歌詞のような恋愛の話ではなく、もっと日常の景色ではありますが、この曲を聴く度に穏やかで楽しく、笑ってばかりだったその景色を思い出します。
皆さんには巻き戻したい穏やかな景色はありますか?

執筆者:そら