天なびコラム

第8680話

2024年08月02日

継承

最近発売されたONE PIECEの109巻を読んで、涙ぐんでしまいました。内容はネタバレなので言えませんが、まだ幼い娘を持つ親の立場だからこそ、なおさら感情移入してしまいます。娘の喜ぶ顔が見たい、娘がピンチの時はいつだって飛んで助けに行きたい、最後は自分の命と引き換えにしてでも娘を守りたい、という親の気持ちは今ならとても分かります。

これまで、日本では多くの自然災害に見舞われてきました。大きな災害に見舞われる度に、災害によって多くの犠牲が出る度に、その災害の経験や教訓は生き残った人達に引き継がれ、被害に遭った町は災害に強くなっていきます。
岩手県宮古市田老地区は私の中でも印象的な町です。田老地区では、明治三陸地震津波(1896年)、昭和三陸地震津波 (1933年)と大きな津波被害を複数回経験する中で、2011年の東日本大震災でも、それらを上回る高さの津波を経験しました。
しかし、明治、昭和の津波に比べて、人的被害は大きく減っています。それは何より過去の津波の経験が語り継がれ、年長者から若者へ町の中で津波への備えが磨き高められてきたからこそなのだと思います。

思い返せば、私も親や恩師、上司や先輩から、優しさも厳しさも大切な多く事を受け継いできました。その1つ1つが今を生きる私の力になっています。この私の経験や思いを、今度は私が娘に伝えていく番です。娘の歩む道はあくまで娘が決める道。躓いたり転んだりしたときにそっと手を差し伸べられるような存在でありたいと思います。

私には娘以外にも、自分の経験や思いを受け継ぎたい大切な人達がいます。それは後輩のような仲間のような弟のような妹のような息子のような娘のような、とにかく大切な人達です。
未来へと繋がる長く険しい道のり。時に苦く、辛い経験をすることもあるでしょう。
生きるために、私は厳しく接することもあるでしょう。
どう歩むかは1人1人が決める道。しかし、それでも最後は、躓いたり転んだりしたときにそっと手を差し伸べられるような存在でありたいと、私は思います。

わが娘にも、すべての大切な人達にも、それぞれに幸せな未来が訪れることを願って。

執筆者:そら