天なびコラム

第6429話

2018年06月04日

残酷な天気のせいで

大阪ではくもりや雨の日が増えてきました。このコラムが掲載される頃には近畿も梅雨入りが迫っていることでしょう。
そんな梅雨入り間近を感じる日々ですが、晴れた日はお昼休みにランチに外へ出ると、影がほとんど無いことに気付きます。歩行者だけでなく、電柱や建物にも影がほとんどありません。これは太陽の南中高度が、夏至が近づくにつれ、高くなっているためです。

地理学では、南北回帰線(緯度約23.44度)に挟まれた地域を「熱帯」と定義しますが、熱帯では年に二回、太陽が頭上を通過する際(南中高度が90度になって)、人や建物の影が無くなります。
ハワイでは、この現象は先住民の時代からよく知られていて、「ラハイナ・ヌーン(Lahaina Noon)」と呼ばれています。「Lahaina」はハワイ語で「残酷な、酷い、厳しい」という意味で、道中に日陰で涼むことができないことから、そのように名付けられたようです。

実際に名前が付いたのは比較的最近(1990年代)で、Bishop博物館の一般公募で決まりました。Bishop博物館のホームページを見ると、ハワイ各地のLahaina Noonの日時が掲載されています。日時と地名を追うと、ちょうど前線のように、5月14日ハワイ島最南端から5月31日カウアイ島Lihueまで北上し、夏至を過ぎると折り返して、7月11日カウアイ島Lihueから7月27日ハワイ島最南端まで南下することが分かります。

日本では、一般人が立ち入ることのできる最南端は波照間島(北緯約24.05度)ですが、夏至の南中時(6月21日12時46分)に訪れれば、ほぼLahaina Noonに似た状況を味わえます。
ついでに日本から格安直行便が就航している空港のLahaina Noonの日時も計算してみましたので、ご旅行される方はご参考になさってください。

高雄…6月5日11時57分と7月7日12時3分
香港…6月3日12時22分と7月9日12時29分
マニラ…4月29日11時53分と8月14日12時00分
バンコク…4月27日12時14分と8月16日12時21分
グアム…4月26日12時18分と8月17日12時24分
クアラルンプール…3月27日12時18分と9月16日12時08分
(以上、いずれも2018年、現地標準時)

台湾では、北回帰線標塔(嘉義県水上郷・花蓮県瑞穗郷・豊濱郷靜浦村の3ヵ所)も有名で、やはり夏至の南中時に影が消えることで知られています。そのうち「拉海納的正午(中午)」と呼ばれるかも。

コラムのタイトルは、検索窓に「残酷な天気」と入力したときに、補完された語句です。何やら替え歌のようですが…(逃げちゃ駄目だ!?)。

執筆者:風来坊